胆石に関して。実際現場ではどう考えているか?

胆石について。
よく健康診断の腹部エコーなどでひっかかる胆石(胆のう結石)について、昨年まで総合病院でたくさんの胆石の方を見てきたこともあり少し触れておきたいと思います。
ガイドライン(治療指針)も踏まえますが、実臨床の立場から書いていきます。

まず胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁を溜めておく(だけ)の臓器です。その中にできるのが胆石です。(原因等についてはは省きます)下記画像を参照ください。
胆石は、決して珍しい病気ではなく人口の1割程度いると言われています。
胆石症の治療は、基本的に手術(胆嚢摘出:腹腔鏡、場合によっては開腹)です。
では胆石が見つかった場合、全員手術するのか。これは、症状がある場合とない場合に分けて考えます。

①症状がない場合(無症候性)
過去も含め胆石が原因と思われる腹痛など症状がなければ、基本的には治療(手術)は適応になりません。(ただし強い希望があればやってもらえるかも)
胆石のサイズも治療するかどうかには全く関係ありません。
ところで胆石があると胆のうがんができる、といった話もあります。確かに胆のうがん目線でみると、胆石を合併している方多いと言われています。しかし、胆石目線でのデータでは、無症状の胆石から胆のうがんを合併することは非常にまれといわれております(胆のうがんの人より胆石の人のほうがはるかに多く、胆石目線だと胆のうがんはまれなんですね。
ガイドライン等では、少し前だと薬によって溶かす治療や、体外衝撃波により胆石を砕く治療(ESWL)も書かれておりましたが、2021年の最新の胆石症のガイドラインでは、ほんの少ししか触れられておりません。実際にこれらは現場ではほぼ行われておりません。体外衝撃波がどういうものか触れておきますと、主に尿路結石で行われる治療で、X線で位置をさだめ外から衝撃波で砕く方法です。これだけだと分かりにくいですが、簡単に書くと1時間くらいの間、1秒に1回くらいのペースでお腹をたたかれる(軽く殴られる)ような感じです。ここまでやっても、消えるとは限らないこともあり、実際はほぼ行われていないと思います。時間もお金もかけて不確かな治療をするくらいなら、胆のうをとった方がいい、というのが主流の考えです。とはいえ、無症候性の場合は基本的に様子観察ですが。。(手術も合併症が起こりうるため、様子見でいいと言われている病気の手術をしてなにか合併症起きること考えたら手術する側も嫌ですよね。。)
経過観察に関しては、腹部エコーを年に1回くらい受けることが言われております。これは結石の大きさを見るわけではなく、がんができていないか見るためですね。

②症状がある場合
胆石による症状として、胆石による腹痛(胆石発作)、それから細菌感染も合併した胆のう炎があります。診断は、身体所見、腹部エコーなどの画像所見、血液検査所見などから判断します。胆石による症状を来した場合は、途中経過はさておき最終的に治療(原則手術)が考慮されます。痛み止めや、抗菌薬で経過見ることもできますが、比較的短期間で再燃することが多いんですね。胆嚢はなくてもあまり困らない臓器であり、胆石だけとるわけでなく胆嚢をとってしまいます。普通に生活をされている方の場合、手術(もしくはとりあえず薬での治療)以外を薦められることはないと思います。
余談ですが、胆嚢の状態がひどく手術が必要だが、施設入所中のご高齢の方などでとても手術(全身麻酔)に耐えられるような状況でない場合に、胃カメラを使って十二指腸から胆のうに針を刺してチューブ(金属ステント:針金で作ったストローのような感じです)を留置することで胆嚢の中の感染胆汁を腸に排出する方法を前にいた病院では行っていました。どこでもやれる処置ではありませんが、患者さんからすると、眠って胃カメラを受けるだけなので、負担が少ないんですね。ただ、基本的には手術が必要だが手術に耐えられないような方のみが対象と思います。

*総胆管結石 胆管炎
一応触れておかないといけないのが本疾患です。胆石は正直痛いだけ、また重症の胆のう炎になっても、たとえ家で痛み止めで耐えていたとしても死ぬことはない、ことが多いのですが、胆のうの結石が胆嚢から脱出して胆管にはまると結構まずいことになります。(下記図を参照ください)。胆嚢は、ただ胆汁を溜めているだけですが、胆管は、胆汁の流れのメインロードです。ここが塞がれ流れなくなると、簡単に感染を起こし、あっという間に菌血症(全身に菌が回る病態)に移行します。腹痛もないことはないですが、どちらかというと40度近い発熱や震えなどの症状がメインになります。胆のう炎と異なり、自宅で耐えていたら死に至ることも十分あります。治療は、緊急で胃カメラを挿入して、胆管にチューブをおいて流れなくなっている胆汁を十二指腸に流れるようにします(長くなるので、詳細は省きます)。
胆管結石は、たとえ症状がなくても放置すると効率に胆管炎を発症するため原則診断したら経過観察はせず、治療を行う必要があります。(治療は胃カメラを用いた処置で行います)そして、胆石がまだ残っている場合は、胆石としての症状がなくても、また胆管結石を再燃することもあるため、手術がすすめられます。

(まとめ)
症状ない胆石 → 様子見。
症状ある胆石 → 手術考慮

胆管結石合併 → 胆管結石の治療は必須。胆石は手術推奨。

最近の記事 おすすめ記事
  1. 大腸CT検査
  2. 大腸CT検査
  3. 大腸CT
  1. 大腸検査
  2. 内視鏡検査室