胃がん対策。ピロリ菌除菌治療成功は簡単には信じない!

胃がんとピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の関係は以前ここでも書いた通りであり、胃がん死を防ぐためにも自身のピロリの状況を知っておくことはとても大切です。
ピロリがいた場合は、除菌治療をすることで胃がんのリスクをさげることができます。
さて、除菌治療ですが、除菌したと言われる方でも実際にはピロリがまだいるケースが結構あります。再感染したのでしょうか?

実は、ピロリの除菌成功の診断はそんなに簡単ではありません。なぜなら検査も100%の精度ではないからです。
ピロリ菌の検査は、7種類ほどありますが、主に除菌成功かどうかの判定に行うのは、尿素呼気試験(袋に息を吹く検査)と便中ピロリ抗原検査(便の検査)です。
いずれも精度の良い検査ですが、偽陰性(本当は不成功なのに、除菌成功と診断される)もまれにあります。尿素呼気試験では、2.5‰以下が陰性判定ですが、結果が2.0‰など陰性でも高値の場合は、実際にはピロリがまだ残っていることがよくあります。
また、最近は行われなくなりましたが、15年前くらいまでは血液検査での血清ピロリ抗体検査も除菌成功かどうかの判定に使われておりました。除菌治療後6か月たって抗体価を測定し、除菌前の半分以下になっていれば成功、とされておりました。しかし除菌成功していても実際は抗体価なかなか下がらなかったりであまりあてにならず、今では日本ヘリコバクター学会からも抗体価による除菌判定はしないように注意喚起されております。
なので、過去に除菌治療をおこなった方には、除菌のきっかけ時期、除菌判定の方法などわかる範囲で問診しています。

さて、除菌が成功したはずなのにまだピロリいますね、となるのはどういうときかというと、除菌後の胃カメラをしたときです。
除菌治療が成功すると、胃粘膜の見た目も変わることが多いです(赤みが取れる、といった感じです)。これが除菌前とあまり変わっていないと、除菌不成功を疑います。そして組織検査をするとピロリ陽性、となったりします。(全然めずらしくないです。)
また、もともとピロリによる胃の炎症がそれほど強くない場合などでは、あまり見た目が変わらないこともあります。なんらかの理由で、組織検査すると、ピロリがいます、と結果が返ってくることもあります。
そして実際に2次除菌(2回目の除菌治療)をすることとなります。(詳細は省きますが、ピロリがいるのに尿素呼気試験などが陰性の状況での除菌なので、その後の除菌判定がまた難しい。。)

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私が現在行っているピロリ除菌の流れです。

胃カメラでピロリ感染疑い
       ↓
血液検査でピロリ抗体測定で陽性確認。除菌。
       ↓
約1か月後に便中ピロリ抗原検査で陰性確認。(90‐95%くらいの確信度)
       ↓
その1年後に胃カメラ。(胃カメラで炎症が改善していれば99%くらいの確信度)
       ↓
その後は胃の状況や年齢に応じた定期的な胃カメラ。

除菌後の胃カメラは、単純に胃がんスクリーニングとしても大切ですが、除菌成功の有無の確認の意味でも大切と思っています。

また最後に、ピロリ再感染に関してです。上に書いたようにピロリの除菌の判定等も難しい状況であり、今まで再感染と言われていた症例のほとんどは、除菌治療が不成功であったことによるものと思われます。実際に再感染に関するデータはほとんどありませんが、再感染はほとんどないと個人的には思います。

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