検査精度について少し。大腸CT(CTC)の検査精度についても触れておきます。

さて、先日参加したCT検診学会で下記のような発表がありました。
”子宮頸がん検診ガイドラインでHPV(ヒトパピローマウイルス)検査単独法が、子宮頸部擦過細胞診と並び推奨gradeAとされた。”
ここで参加者から、2種の検査を併用するのはどうか、といった質問があったのですが(当然そう思いますよね)、併用はすすめない、とのことでした。
その理由は、併用することによるがんの拾い上げの上乗せがわずかなのに対し、偽陽性がかなり増えるから(結果的に放っておいていいのにがんの疑いや、がんのリスクが高いと診断されることで、不必要な医療費や精神的負担が発生する)

なるほど、専門外なので上記に関しては知識も乏しいのでコメントは控えるとして、検査の精度に関しては、よく考える必要があります。
たとえば、
”この検査は、病変を100%ひっかけます、見逃しはありません”
と言われたらとてもいい検査と思いますよね。

では具体的に大腸CT検査で考えてみましょう。
例えば100人に大腸CT検査を行いました。大腸CT検査では基本的に大腸に便がある程度残っています(過去のブログを参照ください)。便と思うがポリープやがんの可能性があるとのことで全員ポリープ疑いと診断し、内視鏡検査することにしました。すると20人に実際ポリープがありました。そうすると、100%病変をひっかけていますし、見逃しはないですね。
でも実際こんな検査誰も受けないですよね。偽陽性が多すぎです。80人の方は内視鏡が嫌でCT受けたのに結局内視鏡やらされていますからね。がんがあるかも、という精神的苦痛も受けてますよね。

医療の場では、検査の精度などを感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率といった用語を用いて評価します。
感度    実際にあるものをあると判定した率。
特異度   実際にないものをないと判定した率。
陽性的中率 あると診断したもので実際にあった率。
陰性的中率 ないと診断したもので実際になかった率。

上記の大腸CTの例を当てはめると、感度100%、特異度0%、陽性的中率20%、陰性的中率判定不能 となります。感度以外がかなり低いです。
感度だけで判断してはいけないということですね。偽陽性がいくらあっても、感度は下がらないんですね(陽性的中率と特異度が下がります)。
ということで、
”この検査は、病変を100%ひっかけます、見逃しはありません”
というのは、かなり怪しいんですね。
感度だけでなく、特異度や、陽性的中率などバランスよく良いのがいい検査となります。
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最後に大腸CTの診断精度について載せておきます。

大腸CTの6mm以上の病変における診断精度(内視鏡専門医の行った大腸内視鏡との比較)
・2012年日本初の大規模精度評価JAPAN National CT Colonography trial(JANCT UMIN2097)
感度 87% 特異度 92% 陽性的中率 79% 陰性的中率 95%
→これにより大腸CT検査が、内視鏡専門医の行う大腸内視鏡検査に劣らないことが示されました。

・私が前医で2017年に消化管学会総会で報告した際のデータ
大腸CTで6mm以上の病変を疑い、その後に行った内視鏡検査と比較した大腸CTの精度検証)
感度94.4%(167/177) 陽性的中率 88.4%(167/189) (*特異度、陰性的中率は、大腸CTで異常ない方に内視鏡は施行していないため測定不能。)
→大腸CT検査は、内視鏡検査の精度に劣らないと報告しました。感度も陽性的中率もよい結果でした。

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